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  ■彷徨える賃借人  
   
   
   
   
     
  ■1414 project  
 
脱・賃借人
   
   
   
   
     
神戸→南森町→駒沢→築地… 居酒屋住宅ができるまで。 神戸→南森町→駒沢→築地… 居酒屋住宅ができるまで。
ハードル越え
勤続年数=3年。
私はこの時を待っていた。
そう、ようやく住宅ローンを借りることができるハードルを越えたのだー。

ある金曜日、郵便ポストに”売マンション情報”のチラシが入っていた。
物件は、現在私が入居しているマンションの中の1戸。

私は築地に建つ、この1974年生まれのマンモスマンションに惚れている。
売りマンション情報が入ると、必ず見に行って、図面をもらってきた。

昭和モダンな風情を持つ設計、行き届いた管理と運営、朝4時に出勤する魚河岸人、
エレベーター内で梨をもらっちゃったり、住人総出で参加する消防訓練など、
一朝一夕には成立しない下町情緒に溢れている。

けれど、それは築地在住数十年、あるいは数世代の方々がつくってきたものだ。
賃貸モノの私は、そのコミュニティに参加するのはイマヒトツ躊躇われ、いつか真の『築地人』になりたいと思っていた。
――― が、なにぶん資金が足りなかった。
2002年8月時点で、
  結論としては、、、、改装工事費が足りない。
それでは意味がない。
残念だが、ここはグッとグッーとこらえて、
再来年を目標に真面目にお金を貯めることにしたのでした。

と決心し、現在2004年。
その『再来年』がやってきた。

折りしも、昨年からリフォーム・リモデル・リノベーション大ブームで、いくつかの物件も見に行ってきたし、イベントにも参加してみた。

原状回復義務に縛られた賃貸生活に限界がやってきた。

そんなわけで、善は急げとばかりに不動産会社に連絡して内見に行ったところ、面積は1221号室と同じながらも、
パイプスペースやメーターボックス、柱の出っ張りがなく、間仕切壁さえ取っ払ってしまえばワンルームとなる間取りは、
「築地会」と称する飲み会の女将である私のライフスタイルに、とても凄く非常にウッテツケの住まいに思えた。

徒然ひと理不尽
さて、問題は住宅ローンである。
本業で、『すまいとマネープラン』という提携住宅ローンに携わっている関係上、
いくらかは銀行のキモチや本音や建前やルールは分かっているつもりだったが、
いざ自分のこととなると話は別だった。
(なんでも自分でやってみなければ、わからんねー。)

借入先は、子供の頃から口座を持っていて慣れ親しんだS銀行か、
あるいは給与振込口座としているM銀行に申し込みたいと思った。
――― しかし。
S銀行もM銀行も、”契約社員”と言った途端、さささぁーっと引いていってしまわれた…
まるで”ケッコン”と口にした途端に逃げていくオトコのようではないか。(経験はないけど。)
こんなに長くお付き合いしてきたのに…
ヒドイ…

ひとり暮らし歴=約8年。
今まで支払った家賃総額=約800万円。(今計算してぞっとした。)

そんな過去の実績はなーんの役にも立たず、結局、「正社員」や「勤続年数」や「会社の規模」など、
”仕事のブランド性”のようなもので判断されてしまうのか。
そんな判断基準しかない住宅ローン業界ってなんなのさー!
何のための保証料なのさー!
このワタクシが自己破産するとお思い!?
理不尽だぁー!

捨てる神あれば疲労神、ではなく、拾う神あり・・・か?
と、一時は激怒した私だが、仲介のO不動産が東奔西走してくれたおかげで、小さな銀行が手を差し伸べてくれそうな気配を見せている。

不動産仲介というと、今までは賃貸借契約の経験しかないので、なんとも胡散臭い商売、グレーな業界だと思っていたが、
O不動産の働きを見ていると、仲介者であることはもちろん、フィナンシャルアドバイザー、建築アドバイザーをもこなし、
本当に頼りになる存在だ。彼がいなければ、話が現実化することはなかっただろう。
もし私のローン審査が通らなければ、彼の働きは徒労に終わるというのに。

さて、今更ながら、
実印とはなんぞ?
課税証明ってどうするねん?
と叫ぶ私を、神は拾ってくれるのか?

キンショー契約
仲介の0不動産のおかげで、U銀行傘下の地方銀行でローンが通りそうな見込みとなった。
その地方銀行、S銀行の本店は大阪。しかも南の方。
関西出身だからある程度は名前を知っていて信用できるようなものの、なんでまたわざわざ大阪の地方銀行なのか???
――― それでいいのか銀行サンよ、不動産屋サンよ。
けれど、借りる者の立場は弱い。
同じ条件で貸してくれるならば、大阪だろうが九州だろうが外資だろうが、どこの銀行でも構わなかった。

申し込みからきっちり1週間後、まるで限界まで私をジらすかのようなタイミングで
「ローン審査を通過しました。」と金融の神様からのお告げが下った。
それを聞いた瞬間、1414号室が手に入る喜びと同時に、
「あー、これでサラリーマンである必要がなくなる・・・」
と肩の荷が下りたように感じた私は間違っているだろうか。
(ある意味間違ってるか・・・)

翌週、東京支店へ赴き、ローン申し込みと相成った。
担当さんは若いながらも、てきぱきと説明しながら、膨大な書類を手順よく捌いていった。
時折・・・いやいちいち口を挟む私に嫌な顔ひとつ見せずに。
私は、どのような書類がどのような内容であるかは、ある程度わかっていたつもりだったが、
これはいい勉強の機会だとばかりに細か〜いことを聞きまくり(例えば「捨て印って何のために押すんですか?」とか。)、
挙句の果てには様々なローンシミュレーションをしてもらい、返済計画を変更し、
当初1時間だった予定を大幅にオーバーして、金消契約は終了した。

金消契約=金銭消費貸借契約。
略すと"金が消える契約" ?といつも不思議な気持ちになる。

バイバイ契約
金消契約の翌日に売買契約というのは異例のスピードらしい。
私はO不動産F氏担当史上最速契約者となった。

売買契約当日は、雨が降っていて寒い日だった。
そういえば手付けを打つためにO不動産へ訪れた日も雨だった、なんて思い出していると、
――― 莫大な借金を背負ってもいいんかい?
――― 引き返すなら今やで〜。
という囁きが聞こえてきた。
私はO不動産の前で立ち止まり、3分考えて決心した。
――― よしっ。

緊張してO不動産に入ると、既に売主のSさんと司法書士さんが到着していた。
前回の手付けを打つときには、Sさんの体調が優れずお会いすることができなかったので、これが初対面だった。
金消契約同様、売買契約にもまた膨大な書類があり、今回は売主・買主2人分の作業が発生するため、
説明する、サインする、印鑑を押すの繰り返しで、テーブルの上は大変なことになった(ような気がした)。
その合間合間に質問を挟む売主と買主。
そして、「売買」は買主(私)の手から売主(Sさん)の手へ、 直接"現金と小切手"が受け渡された。
日常生活での大きな金額の授受は、「銀行振込」や「クレジット決済」に慣れてしまっているので、これは新鮮な体験だった。
この"手渡し"を境に、私たち売主と買主の連帯感が生まれたような気がする。
固定資産税について司法書士さんに質問する私に、前年度の納税通知書を用意してくれていたSさん。
改装しようと思っている、と漏らした私の言葉を知っていたかのように、発売当時のパンフレットと31年前の青焼き図面(!)をくださったSさん。
これは何よりのプレゼントで、本当に本当に嬉しかった。

そして、この家を買った経緯とその31年の暮らし をぽつりぽつりと語ってくれたSさん。
住宅は、こんなふうに歴史を刻みながら次の人へ引き継がれ、もしかしたら私もそうやって誰かに引き継いでいくのかもしれない。
そう思った。

その引き継がれたバトンは『1414(いよいよ)project』 と名付けられ(1414号室だから)、現在は 建築家・寺林省二さんに設計をお願いし、
友人達を巻き込んでの改装計画真っ只中である。

 
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