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■彷徨える賃借人  
   
 
立つ鳥は忙しい編
   
   
     
  ■1414 project  
   
   
   
   
   
     
神戸→南森町→駒沢→築地… 居酒屋住宅ができるまで。
2月20日(火) 昼
引越しするとなると、何から手をつければいいのか?
そう、手続き関連と荷造り。この2点に尽きる。
引越しそのものは、元運送屋さんの友人が引き受けてくれることになった。
持つべきものは友人だ。

荷造りに必要なものは何か?
まず、ダンボール。
しかも丈夫できれいなもの。
よって、スーパーや市場の野菜が入っていたものはパス。
幸い、というか近所に知り合いの酒屋さんがいる。

というわけで、早速「ダンボールを頂けませんか?」と頼みに行った。
「2、3日したら取りにおいで。」と、ご主人は二つ返事でOK。
持つべきものは・・・。

2月20日(火) 夕方以降
夕方から友人に会う。
まだ明るいうちからグラスを傾け、いい気分。
東京へ引っ越すことになった経緯の話なんか、すぐに終わる。
共通の友人の話、大学、テレビ、食べ物の話、お金の話、政治の話・・・
こんなに話せる友達と離れてしまうことに、不安や寂しさを感じる。
東京→大阪なんて3時間あれば帰って来れる、と思うんだけれど、「今日時間ある?」と電話して、30分後に会える。
このフットワークの良さとお別れしなければならない。
今日もこのフットワークの良さを活かし、もう一人仕事帰りの友人を呼んで、夜遅くまで女3人かしましい。

2月21日(水)
大学の恩師に挨拶に行こうと思って連絡を取ろうとするが、入試の真っ只中だけに、教授はお忙しそうで捕まらない。
次にお世話になった建築設計事務所に挨拶に行く。
事前の電話で、”いつも通り出勤”と聞いていた所長は朝から現場で、なかなか戻ってこられない。
勝手知ったる事務所のキッチンで、お茶を飲み、先輩や後輩としゃべりながら所長を待つこと2時間。
「すまん、すまん。飯でも食いにいこうか。ちょっと待ってくれ。な。」
いつも通り急がしそうだ。

お昼を食べながら、
「それはどんな仕事やねん?」
「それやったら、この人に会いに行け」
「こんなことやってみぃ」
「これからの時代はな、」

この設計事務所と出会って、人生変わったと思う。

2月22日(木)…ぞろ目やね。
今日は手続きの日。
手続きについては、去年引っ越しをした友達にアドバイスをもらった。
電気・ガス・水道・電話・クレジットカード・銀行・住民票・・・
電話一本で済むものもあれば、体を動かさなければならないものもある。
引越しシーズンで、なかなか電話がつながらなかったりする。
銀行の窓口がとても混んでいたりする。
シティバンクで、お金を下ろすついでに口座を解約しようとしたら、銀行のお姉さんが引き止める。
浮かれ気分の私は、しょーがないなーと思いつつ、ほとんど空の口座だけ残した。
ついでに株や外貨預金のレクチャーまで受けてしまった。
宣伝するわけじゃないけど、シティバンクは楽だった。
時間を気にせず、ネット上で変更・クリック、で完了。
電気・ガス・水道などは、引越ししてきた時に契約書と一緒にもらった一覧表があったので、片っ端から電話をかけまくる。
順調、順調。

2月22日(木)…ぞろ目やね。その2
(どうも調子が出ないので、ここから関西弁に戻します。)

そして先輩の設計事務所へご挨拶へ行く。
昨日に引き続いての挨拶回りで、なんかナントカ系○○組の若頭衆(?)へ
「兄さん、東京へ行くことになりまして・・・」と仁義を切ってるような日々。

先輩の事務所は福島(梅田の隣駅)にあって、町工場の1階を改装したと聞いとった。
時間にはかなり余裕を持って出掛けたんやけど、それらしき建物が見つからん。
電柱や門柱の住所を頼りに、街区を1周、2周・・・

お巡りさんに聞いてみたら、目の前やった。
そのファサードは、ホンマにフツーの町工場の顔しとったから、見落としとった。
念のため、ちょっと開いとう窓の隙間から中を覗いたら、奥さんの横顔が見えた。
よかった、正解。
ちょっと遅刻したけど。

2月22日(木)…ぞろ目やね。その3
K先輩の事務所は自宅兼用で、先輩ご夫婦と幼稚園のお子さんの3人暮らし。
引き違いの玄関を入ると、そこは土間の事務所。
奥に一段上がった居住スペースが見える。
几帳面な先輩らしい、すっきりした、けどなんか懐かしい雰囲気がする。

奥の居住スペースでお茶をいただいて、え〜な〜を連発しつつ、かくかくしかじかで、お江戸へ行くことになりまして・・・とご報告。
昼前にお暇して、今日こそは徹底的に荷造りすんぞ!
帰りにガムテープやらゴミ袋やらを買うた。
そんで、お約束のダンボールをもらいに行ったら、「いや〜、いつ来るんか思て、待っとったで。」の声。
裏へ見に行ったら、そりゃ凄い量のブツ。
それを、一個一個解体し、持ってきたでかい袋に詰める。
途中から、気分はホームレス・・・?

お昼ごはんは、冷蔵庫・冷凍庫の掃除やね。
こんな急に引越しすることになるとは思てへんかったから、冷凍庫には食材がいっぱい。
冷蔵庫にも味噌やら、チーズやら、予備のマーガリンやら、飲みかけのワインやら・・・
腐らんけど、冷蔵庫から出したくないもんがいっぱい。
これを全部とは言わんまでも、引越しまでに消化するんは、まぁ無理やな。
どないしぉ・・・

2月23日(金)
さぁ、荷造りや。
俄然張り切るあたしは、朝も早うに目が覚めた。
手始めに本棚と季節はずれの服。
”本は小さな箱に”のお約束通り、建築系の本・雑誌、写真集、単行本・・・と種類別に手際よく詰める。
伊達に設計事務所の引越しを手伝ってきたわけじゃない。

洋服も、”どうせすぐに荷解きするんやから”と、どんどん放り込む。
しかもこの引越しを予想していたかのように、数ヶ月前に持ち物のダイエットを断行していた。
だから、捨てるものは殆どない。
素晴らしい!
本棚と収納の中の服がダンボールの中に収まってしまうと、荷造りは3分の1くらい済んだような気がした。
(まぁ、それは大きな誤算やったんやけどね・・・)

午後からは、新幹線のチケットを買いに行ったり、図書館に本を返しに行ったり、東急ハンズに布団袋を買いに行ったり。
大阪市内を北から南へ、西から東へ。
アクティブな一日だった。

2月24日(土)
あんなにたくさんもらったダンボールやのに、昨日張り切って本と服とその他諸々を詰めたら残り少なくなってきた。
というわけで、早朝の天満市場でダンボール集め。
さすがに野菜が入っていたダンボールが多くて、使えるものが少ない。
うろうろ、怪しげに探していたら、市場のおっちゃんおばちゃんが
「ダンボール探してんのんか?これ、持って行きー。」
と、次々と持ってきてくれた。
嬉しいんやけど、使いもんにならんヤツもある・・・。
そういうのはこっそり外さしてもらって、ええヤツだけをありがたく頂いて帰った。

午前10時。よく行く新大阪の珈琲店で、人に会う約束。
ま、人生相談のようなもの・・・?
「一度決めたら、とことんやってみなはれ。」
こんなんで、アドバイスになってんのか?

午後1時。梅田で友人に会う。
夕方までお茶したり、買い物したり、お茶したり、お茶したり・・・
夜。疲れて寝る。

2月25日(日)
今日は、予備校時代からの友人と会う約束だった。
が、医者の彼女は緊急手術が入ったため、アウト。
昨日、電話がかかってきた時も、確か夜中の1時ごろで、「今、仕事終わったとこ・・・、帰る途中・・・。」と言っていた。
インターンとは言え、こんな過酷な仕事状況で体は大丈夫なんやろか。

その約束がなくなったので、再び荷造り。
今日は天気もええし、そんなに寒くないから、バスルームをやってまぉ。
3点ユニットの狭いバスルームやけど、床・壁・天井・バスタブ・便器・換気扇・・・
ドア開けっ放し・換気扇全開でも、マジックリンの臭いがどんどん充満してきて、
くらくらしながらもピカピカになっていくのは、かなり爽快。
(日頃マメにやってなかったことがバレバレ?でも、年末大掃除はしたんよ!)

次は玄関と押入れ。この辺も雑巾掛けを始めると、きりがない。
ここも、床から、壁から、天井から、拭いて拭いて拭きまくる!
私は日常生活大雑把な人間だけど、やるときゃ徹底してやります。

2月26日(月)
朝、やっと捕まえた大学の恩師へご挨拶に行く。
教授は、ベレー帽の似合う細身のダンディーな方だが、最近になってあご鬚と口髭をたくわえられ、
ますます”イギリス紳士”的。かっこいー。
言葉も、関西弁ではないところも”イギリス紳士”的ポイント。

午後、帰ってきて台所の荷造り。
台所は台所でも、うちでは暗室も兼ねていたので、薬品類など写真用品も多い。
とりあえず、必要最小限の物だけ残して片付けよ・・・と思ったけど、甘いね。
あと1週間、ここで生活することを考えると、食器はともかく、調理器具と調味料を荷造りしてしまうわけにはいかん。
かといって、捨てていくっちゅうわけにもいかんし。
1週間ずっとコンビニに頼るんは、もっとイヤやし。
そんなこんなで、台所には蓋が閉められないダンボールが山積み。
だんだん、通路がなくなってきた・・・

2月27日(火) 日のあるうち
たかだか25平米の広さの家だけど、徹底的に掃除しようと思うと、目に付くところが次から次へ。
4年前ここへ引っ越してきたとき、まず最初にやったことはベランダの掃除だった。

床と手摺壁がコンクリートなので、雨や埃やスモッグで(?)ドロドロだった。
だから真冬にも関わらず、たわし片手に洗いまくった。
”グレー所々黒”だった壁が、どんどん白くなってゆくのは快感だったけれど、
同時に大阪の雨と空気の汚いことを、身をもって実感した。

4年後の今日、また同じことを繰り返している。
こんなところに、洗濯物やら布団やらを干しとったんや・・・
いくら国道2号線に面してるからって言っても、空気の悪いところやなぁ。

2月27日(火) 日が暮れてから
夕方から、法善寺横町で師匠二人と飲むことになっていた。
お忙しい師匠たちは少々遅れ気味なので、水かけ不動にお参りする。
(朝の連ドラ「ほんまもん」にもよく出てきますね・・・。苔むしたお地蔵さんのいるところ。)
近所で働いている人だろう。小粋な女性が現れ、水の少なくなったバケツを手に取って、すぐそばの井戸へ行き、
キーコキーコと慣れた手つきで水を汲み上げ、水を汲み足す。
薄闇の路地では、開店したばかりの店から漏れる明かりが、打ち水された石畳を照らす。
ここは、本当に21世紀のミナミなんか・・・?
行き交う人は、”ちょっと金持ちげなおっちゃんと派手なおねいさん”だったり。
ま、今日の私もそんなに変わらんか・・
師匠二人とも、ちょっと(いや、かなり?)強面やからね・・・

こんな二人に囲まれた”一応あたしの送別会”が”送別会”らしかったのは最初だけ。
20年来の友人である彼らが、プライベートで一緒に”飲む”のは数年振りだったからか、
いつの間にやら二人の思い出話で盛り上がる。
彼らが出会った頃の年齢は、今のあたしと変わらない。
小さな小さな同窓会のようで、そこにちょっと参加できて嬉しかった。

2月28日(水) その1
朝6時起きで、今日は東京GO!
って、気合入れるようなもんじゃなくて、賃貸契約を結ぶためだけに東京へ行く。
面倒くさ・・・
こういうものこそ、なんでネット上でできないんやろ?
書類は郵送するにしても、敷金なんかはクレジットカード決裁できたらいいのに。

お昼前に東京へ着いて、途中で大金(!)下ろして、下北沢の不動産屋へ。
そこでちゃっちゃと契約済ませて、鍵をもらうためだけに都立大学前の管理会社まで移動し、駒沢の”新居”へと向かった。
外はなんだか曇り空で、電車は混んでて、家は駅から遠くて、前日の疲れも残ってて、だんだんブルーな気持ちになってきた。
鍵を開けて、”新居”へ入ると、がら〜んとした部屋は、案の定、暗〜い、寒〜い。
さみし〜い。

2月28日(水) その2
とりあえず、窓を開けてみる。
ごろーんと床に大の字になってみよか、と思った時、1階の部屋でそれはマズいやろ、と思い直して窓を閉めた。
近くの小学校から、声が聞こえてくる。
でも、静かや。

ジワジワとこみ上げてくるワビしさを振り払うため、鞄から取り出したるはコンベックス。
部屋のタテヨコ、天井の高さ、収納の高さ・奥行き、シンクの奥行き・・・
あらゆるところを測ってはメモする、を気の済むまで繰り返し、家を出た。
鍵をかける。カッ…シャン。
初戸締りの音は、思ったより大きく響いた。
表のバス通りに出て、駒澤大学駅前へと歩き始めた。
あ、小洒落たケーキ屋さんがある。店内にはマダ〜ムの姿が。
(後で知ったけど、このパティスリーはかなり有名な店らしい。)
隣には小さな本屋。反対側には家具や古着ののリサイクルショップ。
おっ、神戸屋キッチン発見!
神戸屋キッチンが近くにある、ということだけで、あたしはここで暮らしていける、と思った。
パン好き、ここに極れり。
ブルーだった気分から少し立ち直り、大阪へ戻った。

3月1日(木)
3月に突入してしまった。
引越しは3日後。
荷造りなんか、2日でできる!とタカをくくっていたのは大間違い。
前回の引越しは、親元から自分の身の回りのものを詰めるだけ、しかも母が手伝ってくれたからすんなり終わったようなものの、
今回は引越し当日までトイレを使う状態。
間に合わん・・・
パソコン関係を詰めてしまおう。
2〜3日くらい、メールのチェックせんでもええやろ。
固定電話も、外してええかな・・・
急ぎの人は、携帯へ電話ちょうだい。

3月2日(金)
船場にある友人の設計事務所へ自転車を走らせている途中、ふと目に留まった携帯電話屋さん。
あたしの携帯は、当然docomo関西。電話番号を変える気はない。
そうや、機種変更しよ。
次もSONYにしよう。
スケジュール押してるくせに、変更手続きを取る。
現実逃避かなぁ。
データの入れ替えに1時間ほどかかると言われ、特に用事もないのに東急ハンズへ行き、
最上階から順に見て周り、あれやこれや買い込んでしまう。
ハンズもロフトも、ちゃんと東京にあるのにな・・・
新しい携帯を受け取った後、梅田へ戻り、阪急百貨店で引越しのご挨拶用にタオルセットやらお菓子やらを買う。
デパートも、ちゃんと東京にあるのにな・・・

3月3日(土) 雛祭り
今夜、友人のジャズピアニストのライブがある。
もう当分の間行けないことは確実や。行きたい・・・。
けど、行ってええんか?明日引越しだっていうのに。
まだまだ片付けは残っているのに。
・・・・・泣く泣く諦めた。残念やけど諦めた。
朝からせこせこと片付けてはゴミ捨て、片付けてはゴミ捨て。
うちのマンションが、ゴミ出し24時間OK・分別なしで良かった〜、と、このときばかりは感謝した。
引越し先にゴミを持っていくのは、避けたいやん?

その夜、多忙な医者の友人と会った。
梅田のHEP NAVIOの観覧車に乗った。
女二人で乗りこんだ夜の観覧車は、意外なほどしんみりとした空気が漂った。

3月4日(日) 引越し当日
車への積み込みは昼過ぎからだけど、半端に残っているものがもう山積み。
自分が今まで寝ていた布団を布団袋に詰め込む。冷蔵庫の水抜きをする。
最後まで使っていた食器を梱包する。パジャマも服もまとめて突っ込む。
トイレットペーパーと雑巾だけは余分に取っておく。

捨てる予定のオーディオで、地元のFM802を聴きながら歌いながら、
なんやらかんやらしているうちに時間になり、積み込みがはじまった。
・・・速い、早い。
あたしは玄関まで運ぶだけ。
6階からトラックまで、男二人で運ぶのに2時間とかからなかった。
彼らには近くのファミレスで待っていてもらい、なーんにもなくなった部屋に戻り、雑巾両手にあらゆるとこを磨く、磨く、磨く。
この家に引っ越してきた時の嬉しさを思い出しながら、気の済むまで磨きまくった。
そしてオーディオと最後のゴミを捨て、最上階の大家さんにご挨拶に伺った。
本当にお世話になりました。いろいろ良くしてもらいました。
もし大阪に帰ってくることがあるなら、またここに住みたい。
(できるなら、一つ下の階の広い方の部屋に。)
トラックに乗り込んで銀橋を渡る時、後ろから夕日が射した。
思わず振り返った。


立つ鳥は忙しい編 終わり
巣づくり編へ
 
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